【卒業生インタビュー】森田剛さん(ディスカバリーコース4期生)「もう今の僕自身が、この総合探究の成果みたいなものです!」
今日の卒業生:森田剛さん 神戸大学海洋政策科学部
聞き手:ディスカバリーコース統括 伏木陽介
伏木先生:今日は、その探究活動の経験談を共有させてもらいたいなというふうに思います。よろしくお願いします。
探究としては5年間になりますが、その経験や、ここに書いてある成果と影響について、肩肘張らず、ざっくばらんに話を聞かせてもらえればと思っています。
在学中のゼミ活動:研究テーマと活動内容
伏木先生:では、まず最初に、ゼミ活動についてです。探究として、どのような研究テーマに取り組んできたのか。
ゼミ活動が中心になるとは思いますが、ミッションチャレンジも含めて、中高一貫の探究活動でどのようなことに取り組まれたのか、お話を聞きたいです。
その中でどういう活動をしたのか、印象深い経験について伺えたらと思います。
まずは、研究テーマについてどうでしょうか。ゼミ活動を振り返る形で、最初に話してもらえればと思います。どのようなことをやってきたのか教えてもらえますか?
森田さん:ゼミでは、僕は水関連でやりたいことがありました。
最近、流しそうめんなどに使う竹に水を流した際に、まっすぐ流れずに複雑な流れになる現象があります。
その流れにどういう傾向や法則性があるのかを調べていたのがメインのゼミ活動です。
これより前には、物理ゼミでもう一つやっていました。それが、野球のスライダーを極限まで曲げたらどれくらい曲がるのか、といった理論的な研究です。
伏木先生:理論的にスライダーを。ははは。よく曲がる変化球がテーマだったんですね。野球のスライダー。
森田さん:野球のスライダーです。
伏木先生:どこがどう影響して曲がるのか。なるほど。力学っぽい感じですね。その野球の話は、
森田さん:くんがもともと野球好きというのがあると思いますが、竹の話、流しそうめんの水の流れは、どういったきっかけで探究テーマ、つまりリサーチクエスチョンに辿り着いたのでしょうか。
森田さん:うーん、まず海の船乗りになりたいという思いが根底にあり、水に関連する研究がしたいと考えました。
けれど、海や川をゼミ活動内で詳細に研究することはできない。
そこで、自分の身近なもので何があるだろうと考えた時に、「あ、流しそうめんとかがいいんじゃないか」という結論に辿り着きました。
伏木先生:実際に流しそうめんみたいな...余談ですが、あんな滝でゴリゴリ研究はしないから。
そういった現象に近いことは経験上あった、といったところですかね。
では、具体的な活動内容についてですが、ゼミの中で、その探究テーマに沿った活動を、毎週の授業時間や、あるいは授業以外の時間でどのように行ってきたのでしょうか。
森田さん:僕たちの活動は、調べるというより、実験することが中心でした。
活動はだいたい 3 つの工程に分かれていました。まず、何をするかを探して、それが決まってから実験をして、そのデータを集めてレポートにするという流れです。
伏木先生:なるほど。その活動の過程の中で、特に印象に残っている経験などはありますか?
森田さん:思い出に残っていること。やっぱり、ゼミ活動の 2コマだけでは足りなくて、土日などにみんなで集まって、あるいは夜間に映像を見てレポートを書くなど、授業以外のところでレポート作成をしていたのが記憶に残っていますね。
伏木先生:やはり、授業時間とは違う、まとまった時間をとったり、そうですね、別の時間を使って活動されていたと。
今の話から見えてくるのは、探究という活動は、いわゆる授業だけで全て完結するものではないということですかね。
森田さん:種類にもよると思いますが、実験してデータ数が増えれば増えるほど質も上がってくるので、高校生でもできる限り本格的なものにしようと思ったら、やはり授業外での取り組みが必要になってきました。
伏木先生:なるほどね。そうですよね。ちなみに、その探究活動は強化学習、例えば、授業へのモチベーションや、探究の内容で少し接触りがあったなと感じたことなど、気持ちの部分も含めて何か影響はありましたか?
森田さん:僕らがレポートを書く上で使う知識が高校物理だったので、大学物理は習っていませんから、それをレポートで書こうとなった時に、やはり復習もすることになりました。
そういう意味では、高校の物理の知識を十分に活かせていたと思います。
伏木先生:高校の物理は、じゃあそれなりに結構活かせた。
森田さん:僕は活かせたかなと思います。
外部との繋がりとコンテスト参加
伏木先生:ありがとうございます。次に、外部との繋がりについてです。どのような方と繋がったりされたのか。
また、外部のコンテストにどのようなものに参加し、その中でどのような経験を得たのか、あるいはコンテストに出る意味や意義について感じていることがあれば教えてもらいたいです。
森田さん:外部の専門家とはそんなに関われていないですね。大学へのコネクションも持っていなかったので。
ただ、物理ゼミ担当の伴走の先生にお願いして、、大学の教授、研究者の方にレポートを見てもらい、アドバイスをもらうといったことはしていました。
伏木先生:伴走の先生に、研究者の方と繋がる機会を持ってもらった、という感じですかね。
森田さん:そうですね。僕が直接話すというよりは、レポートを見てアドバイスが返ってくるという形だったので、そこまで深くはなかったですが、関わりはありました。
伏木先生:そういったアドバイスを受け取った時、どうでしたか?
森田さん:いや、ありがたいですね。なかなか専門家からの意見を聞く機会が少ないので、少しでももらえるだけでもありがたかったです。
伏木先生:やはり、研究者の視点や知識としてのパワーアップはもちろん、モチベーションにも繋がる、といったところですかね。
森田さん:そうですね。
伏木先生:では、外部コンテストについてですが、出場・エントリーした大会と、そこから得られた経験、印象に残っていることを教えてください。
森田さん:僕が多分 2 つ出てて、ちょっと名前忘れちゃったんであれなんですけれども。
伏木先生:あれですね。物理チャレンジと物理ジュニアセッションですね。
森田さん:この 2つですね。僕が出たのは。
伏木先生:そのコンテストに応募していく中で、準備はどうでしたか?
森田さん:準備はそうですね。期限が決まっていたので、探究活動の中では比較的計画的にやってたという感じがあります。
あとは、ポスターセッションではなく、Zoomでのオンライン形式だったので、特殊なプレゼンの練習にも割と時間をかけました。
伏木先生:なるほど。対面とは違う。どういった点に違いがあると感じ、工夫しましたか?
森田さん:対面だったらもう少しフレンドリーに、相手の出方を見ながら動けるのですが、それができませんでした。
もう一つは、実際のポスターなら自分の手で場所を指させますが、Zoomの形だとカーソルになってしまい、どうしても見にくかったり、ラグがあったりしてうまくいかない。
ですから、視点の誘導など、見て欲しいところにちゃんと見てもらうということに気を使いながら練習していました。
伏木先生:ありがとうございます。そのプレゼンテーションを振り返ってみて、どこら辺で経験値が上がったと感じますか?
花園の探究の中で、プレゼンが鍛えられたなと感じる経験や、プレゼンテーションというものを考えるきっかけになったものはありますか?
森田さん:プレゼンは本当に時間をかけて準備しました。中3のミッションとか。
この物理のやつぐらいになるのですが、特に中3のファイナルプレゼン大会で、大勢の人の前でプレゼンしたのが良い経験になったと思います。
伏木先生:なるほど。確かに中3の時は、モニターを使ってスライド型のプレゼンテーションで、しかも大勢の前でという経験でしたね。
森田さん:1回やれたというのが大きいと思います。あれだけの場でできたんだということが、僕の中ではプラスの印象になっていますね。
伏木先生:今おっしゃったように、1回やったという経験が大事なんですね。
森田さん:そうですね。僕はその1回やったというので、自信を持って「1回やったら、もう1回いけるだろう」ぐらいの楽観的な人間なんです。
伏木先生:なるほど。それは大きいですよね。野球の話じゃないですが、やっぱりそのマウンドに立ったことがあるという自信。場数を踏んでいる経験は大きいかもしれないですね。
森田さん:そうだと思います。
将来への影響と後輩へのアドバイス
伏木先生:ありがとうございます。では、次に探究活動が将来に与えた影響について、現在を軸にシフトしていけたらと思います。
卒業してしばらく経ち、この本校でできた探究活動が、今の森田さんの進路や、自分自身にどのような影響を与えたかについて教えてもらいたいのですが、いかがですか?
森田さん:僕は推薦で、しかもこの物理ゼミの探究の成果で進学したものですから、どんな影響と言われても、もう今の僕自身が、この総合探究の成果みたいなものです。実績自体が。
伏木先生:なるほど。もう探究イコール自分の進学と、ものすごく結びついた。影響という意味では、大影響だったということですね。
森田さん:もはや僕自身みたいな。
伏木先生:なるほど。自分がやってきたことが、今の神戸での活動に影響している、ということなのですね。今の大学での学びに繋がりは出てきていますか?
森田さん:今、まだ1年で一般教養なので、専門的なことはあまりやっていませんが、これからですね。今までやってきたことが生きてくるのは。
伏木先生:そうですね。ありがとうございます。では、後輩へのアドバイスに移りたいと思います。
これから続いてくれる花園生に対して、探究の面白さや、どういうところに醍醐味があるか、といったところを伺いたいのですが。
森田さん:面白さは、やっぱり自分がやりたいことをやることがめっちゃ大切で、
受験とか進路のこととかを考えて逆算してやるよりも、自分がやりたいことをとことん突き詰めていったほうが、多分成果も良いものになるだろうし。
まずは、深いことを考えず、自分がやりたいこと、深く知りたいことを見つけて、それを探究してみるのがいいかなと思います。
伏木先生:例えば、中1での「好きを極める」や、高校段階での課題解決型活動がありますが、自分のやりたいことと直結しているか見えにくい探究もあります。
例えばミッションチャレンジは、企業が持つ課題に対して、自分のオリジナリティをどう発揮するかが課題になってきます。
ああいう類の探究活動の時、モチベーションを高めていくには、どういうところに面白さがあると思いますか?
森田さん:ミッションチャレンジとか、企業が課題を提供するものですね。僕は宇宙に興味があったので・・・。
例えば、自分が好きなことではない企業ミッションが来た時に、と考えると、うーん、僕だったら自分の好きなこととこじつけるか。共通点を探して、そちらに持っていくかなと思います。
伏木先生:なるほど。でも、それって個人的にはすごい大切なスキル、考え方、マインドセットだと思っています。
そこに自分のオリジナリティを発揮する場所を想像できるので、そのきっかけになる。つまり、自分自身のゾーンに引き込んでいくというか。
「自分×〇〇」といった形で、自分なりのオリジナリティを持って探究していくことは、与えられた課題に取り組む探究においては、一番大切になってくるのかなと思います。
大学の研究でも、自分だったらどういう風にこの研究に結びつけられるかな、と想像を巡らせることが大事です。そういった想像力は、すごく大切だと改めて感じました。
伏木先生:あとは、後輩たちが探究活動で、例えば、間延びしてしまったり、やる気が伸びなかったり、実験結果が期待通りにならなかったりと、
様々なハードルを迎える時があるかもしれないのですが、そういった時に、「こういう風に考えて乗り越えてきました」というアドバイスがあれば教えていただきたいのですが、どうでしょうか?
森田さん:困難は、僕はもう友達に頼ります。自分で考えてどうにもならないなと思ったら。
伏木先生:なるほど、友人に。相談や、自分の愚痴も含めて、一緒に共有したりというところでしょうか。
森田さん:もちろん、アイデアで詰まった時に話すこともありますし、実験で人手が足りないから来て、といったことをするぐらい、頼ってもいいのかなって思います。
伏木先生:なるほどね。そうですよね。結局みんなでやったほうが、結果も出るかもしれないし、何より楽しいかもしれないので。
お互い様なので、周りも困っているときには、逆に自分が参加してあげるよ、といったギブ&テイクも、探究活動では大事なのかもしれないですね。
伏木先生:ありがとうございます。次はグループ探究についてです。ミッションチャレンジもそうでしたが、グループ探究において、技術的な工夫というよりも、「こういう風に考えるといいよ」といった考え方や、「こういうところがためになるよ」といったアドバイスがあれば教えてもらえますか?
森田さん:うん、とりあえずその意見を一つにしないことだと思います。グループで意見が複数あったって僕はいいと思うんです。
全員が納得する意見を出そうと思えば、面白くない、模範解答しか出てこないと思いますし、それぞれが自分の意見を用意して出すこともありますし、それぞれの分野についてしっかり考えて結論を出すということもある。
いろんな人の意見を混ぜて一つにするのも大切だと思いますが、僕はそれを並列で出して、他の人がそれを混ぜたり比較してみるほうが大切かなと思っています。
伏木先生:なるほど。要は、合意形成をするだけではなく、並列で多様な意見を泳がせておくというか、それぞれを並列で考えていく。
それによって、個人では考えられないものが生まれてくる、ということですね。
森田さん:そうですね。僕はどうしても混ざり合ってしまうと、それぞれの本心が書き消されてしまうんじゃないか、というのを思っていて。
伏木先生:いや、それは大いに参考になる考え方だと思います。確かに、同調的になって、予定調和的な結論に至ってしまい、あまり面白くない、となるよりも、ちょっと尖った意見が混じり合って、結果的に研究の成果がすごく印象に残る方が、グループ探究としての面白さに繋がるかもしれない。なるほど。そこはかなり新しい視点ですね。
探究活動を通じて得たものと教員への要望
伏木先生:じゃあ、探究を通じて得たものはどんなところですか?具体的なスキルや力だけでなく、考え方やマインド、キャリア的な部分も含めて、特に感じられるところを中心に述べてもらえますか?
森田さん:そうですね。僕は物理だから、全部のことを数式とか論理的に整理しようとしてきたので、「じゃあこれってどうなるんだ?」とたまに思うことがあります。
今までやってきた経験則から、「だいたいのことは高校までの知識で説明できるんじゃないか」という仮説が僕の中に一つあります。
すごく難しい細かいことを省けば、大枠は高校までの物理、数学、科学で説明できると思っているんです。
だから、「これ高校化学の時点で矛盾生じてない?」といったことで、「胡散臭いな」と感じたり、「これ高校物理の観点から見たらこういうことになるのか」と、割と考えてしまう人になりました。
伏木先生:そういう思考の仕方、考えるスタイルを手に入れたことが、探究の過程で得たもの、という感じですかね。
森田さん:そうですね。探究テーマを考えるにあたって、身近にあるものがどういう物理現象か、どういう力学的な話なのかを考えていたので、その流れで、そういうことを考えてみることもたまにあります。
伏木先生:やはり、考え方を手に入れるというか、物の捉え方やスタンスを手に入れたというのは、表現力といったスキルよりも、もっとレベルの高い、本質的な部分ですね。
森田さん:プレゼン力は、後輩のプレゼンを見ると「俺より全然うまいじゃん」となるので、そんなに増えたとは思っていません。
では何かというと、やっぱりこの課題探しのタイミングで使っていた考え方が一番だったのかな、というところに落ち着きますね。
伏木先生:それはすごい素敵だと思います。プレゼンテーションの力は、車で言うと外形フォルムのようなもので、エンジンといった動力源とはまた違います。
本質的に大事になってくるのは、そのエンジンの部分。森田くんが言っているのはまさにそっちで、探究内容はやはり勝負なので。
そういう意味では、「花園探究イコール今の僕です」と言ってくれたのは、意図として繋がる気がします。
伏木先生:ありがとうございます。では、次に教員に求められる役割についてです。伴走の先生と関わる中で、どのようなサポートがあると助かったか、
あるいは、どういったバランスでの関わり方がありがたかったか、教えてもらえますか?
森田さん:特に個人で探究する時、一番難しいのは何を探究するか決めることだと思うんです。だから、そのスタートのタイミングは、僕はめちゃくちゃ先生に入って欲しかったです。
自分が思いつくよりも先生が思いついたほうが良いアイデアだとなることも全然ありましたし。
最初のスタートダッシュのタイミングは、アイデア出しや面談などで関わってきてくれたらなと思うのですが、中盤は、僕は実験する方なので、そこまで先生の介入はいりませんでした。
やっぱりテーマ決めと、最後のプレゼンの構成ですね。
特にプレゼンの大会などで発表する時の対象は、学生ではなく教授とか大人の人が多いですから、大人の目線から見た時にどう見えるかという。この最初と最後のサポートが助かりますね。
伏木先生:ありがとうございます。最後に、将来の展望についてです。探究活動を踏まえて、探究と将来を結びつけた展望について、率直なお考えを教えてください。
森田さん:お世辞を言ったと言われると嘘になっちゃうので先に言っておくのですが、僕は割と船乗りになるという夢を高校1年ぐらいから追っかけてきて、
そのために水関連の研究をしたいと言ってました。推薦などもちらっと見ながら探究をやっていた節はあるので、そこから繋げて、正直、今があるんです。
これから船乗りの免許を取るために勉強して実習していくので。
伏木先生:研究テーマの接続性というよりは、今おっしゃったような経験やマインド、考え方が活かされそう、という感じですね。
森田さん:そうですね。やっぱり自分で探究して自分で進めていくという点では、これからの勉強とかには重要な経験だったかなとは思います。
伏木先生:じゃあ、そろそろ時間なので、これで終わりにしたいと思います。どうも今日はありがとうございました。
森田さん:いえ、楽しかったです。話すために来たので。またよろしくお願いします。
「第20回 日本物理学会 Jr. セッション発表研究」に参加が決定したときの記事はこちらからご覧いただけます。